レベルの低い高校を選んだら、大学進学が有利になった話

よりよく生きる

 前職の先輩の息子さんが有名な工業大学に進学した。その大学に行くのだから高校は地元の偏差値1番か2番の高校だろうと思い、高校名を聞いてみると、なんと真ん中よりも下の偏差値の高校だという。

 高校進学の進路の話を息子さんとした時に、先輩は自宅の近くにある偏差値3番目の高校に頑張ればいけそうだったので、その高校を勧めたのだが、息子さんは気乗りしない返事。受かるかどうか不安だから気乗りしないのかと思い、頑張らなくても十分合格圏内に入っている自宅から次に近い偏差値が真ん中くらいの高校を勧めたのだが、それも気乗りしない返事。では、どこがいいんだと聞くと、息子さんは恐る恐る真ん中よりも下の偏差値の高校の名前をあげたそう。その高校は先輩の家からだと電車もバスも使えず、自転車だと片道1時間かかる高校なので、先輩は、

「何で?」

と思わず大きな声がでてしまい理由を聞いた。すると息子さんは元の仲間と皆でその高校に行こうって話になってと・・・小さな声で理由を語った。なるほど、父親に「他人に流されて決めた」ように思われ否定されるだろうと思っていたから、恐る恐る口にしたわけだ。先輩はあっさりしているので、それならそれでいいよと否定する事無く認め、息子さんは希望の高校に入学する事になった。

 本来行ける偏差値の高校よりも、だいぶレベルの低い高校だったので、高校に通い出すと息子さんは、

「父さん、あの学校バカばっかだよ。」

といい出す始末。成績は常に上位十番以内に入っていたという。

 高校三年生になり志望大学を選ぶ段階になり、工業系の大学を志望された息子さん。バカばっかと言っていた周囲に流されず、ちゃんと勉強はしており(周囲のレベルが低いと勉強しなくても大丈夫だなーと身を崩してしまう人がママいる)、予備校にも通っていたので頑張れば六大学くらいは狙えそうな位置にいた。工業系の大学をいくつかリストアップして、どの大学を受験しようかと息子さんと相談し、絞り込みがだいたいできた頃、突如、学校から「指定校推薦枠」のお知らせが。その中に冒頭で述べた「有名な工業大学」の推薦枠があったのだ。先輩は何でこのレベルの高校でこの大学の指定校推薦が? と思ったそうだが、どうやら、その高校からその大学に進学し、現在、研究員としてその大学に在籍している人がいるようだった。

 先輩は息子さんと相談し、その大学の指定校推薦を使うことに。尚、指定校推薦を使える条件に英検2級以上があったそうだが、高校に入って急に英語が得意になった息子さんは英検2級は取得済みだったのでここはクリアしていた。

 指定校推薦の試験は面接のみ。面接はコロナ禍ということもありズームを使うのだが、息子さんは予備校の教室に通うのが面倒でズームで講義を受けていたので、ズームの操作やズームでの自身の見せ方については問題なし。面接の内容の対策は、先輩がネットの掲示板等でその学校や工業系の大学の面接内容などを総ざらいし、模擬問題集と模範回答を作成。息子さんと夜な夜な模擬面接を行ったという。

 面接当日、先輩の模擬問題と同じ質問(建築学部を志望していたので「好きな建築」や「好きな建築家」等を聞かれた)を投げられたので模範回答をもって対応。結果、合格する事ができたという。ちなみに後で高校に聞いたところ昨年以前もこの指定校推薦枠を使った受験生は何人もいたがことごとく落ちていたそうで、この大学に進学したのは、この枠を作ってくれた現在研究員をしている方と、先輩の息子さんのみという事だった。「指定校推薦」というと、余程のヘマをしない限り合格確定と思われているところがあるので、一般的な面接対策はしても、工業系の大学で質問される質問の対策はしていなかったのだろう。普通科の高校生では余程建築に興味がない限り、好きな建築家(もちろん名前だけでなく、どこが好きなのかも答えなくてはならない)を即座に応える事は難しい。先輩は、仕事でやると決めた事は徹底的にマニアックと思われるくらい追及し成果を出してきていたが、「模擬問題集と模範回答」にその片鱗を垣間見る事ができた。

 また、「指定校推薦」の試験内容は面接だけだが、合否の判定には面接に加えて、高校の内申書が使われる。先輩の息子さんは「バカばっか」の高校で上位十名を常にキープしていたので、内申書は非常に優秀な成績になっている。面接官は受験生の高校のレベル等知らないので、高校のレベルは加味されず内申書の成績のみで判断が下されるようなのだ。そういえば、私も大学の推薦試験を受けたとき「こんなに成績いいのに何でウチの大学に来たの?」と言われた(私が卒業した高校は学年の3分の1は高校卒業後に就職する学校だった)。全国的にレベルが高い高校を知っている人はいても、上の下以下のランクの高校など、自分の地元か、余程特色がある高校でない限り知らないだろう。先輩は無理して自宅の近くの高校に行っていたら、こんな成績はとれなかったから結果的によかったと感慨深く言っていた。「友達がいくから・・・」という主体性のない理由ではあるものの、息子さんの意思を尊重した結果、希望の進学先に行くことができたのだ。

 人生何が幸いするかわからない。ふいに訪れたチャンスを掴んで生かすためにも、今この場でやるべき事をやり、力を蓄える事が大切なのだ。

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