近年、フリーランスが増えている。
クラウドワークスやランサーズといったフリーランスと発注者を結びつけるウェブサービスによって自分の技能を売り込みやすくなり、また「働き方改革」によって残業時間が抑制され、サラリーマンが副業をやりやすい環境が整えられてきている。副業で稼げるようになると本業を辞め、副業を主業に据え、自由な働き方ができるフリーランスになる人も多い。
企業側も働き方改革により労務管理の制約が厳しくなるばかりの常時雇用の従業員を雇うよりも、必要な時に必要な技能を貸してくれ、労務管理を一切しなくてよいフリーランスに仕事を任せたいというニーズが年々高まっている。
だが、この起業・フリーランスブーム、2002年卒の就職氷河期世代の私から見ると危うさを感じてならない。
私が就職活動を始めた頃、就活情報の冊子には「派遣社員のススメ」という特集があり「仕事とプライベートを両立したい方は派遣社員がオススメです」とあった。ブラック企業という言葉がなかった当時、正社員として採用されればプライベートを犠牲にするのはある種当たり前だった。対して派遣社員は働くときはガッチリ働くが、休むときは休んでプライベートに注力できるというものだった。特集のインタビューに出ていた方は、大学時代に始めたダンスを社会人になっても続けており、大会や大会前の練習期間にシッカリ時間をとりたいので、その期間は仕事はしないというスタンスだった。今でこそ有給は労働者の権利として広く周知され、年に10日以上有給が付与される従業員に対して5日以上有給をとらせないと会社が罰せられるが、当時は有給は体調が悪くて休む時にしかとれなかったり、そもそも有給休暇がないという労働基準法違反の会社も跋扈していた。有給を全日消化できる会社など、ほとんどなかっただろう。
当時の私は大学時代にやりたいことを沢山やってきたので、そこまでプライベートの時間を充実させたいとは思わなかった。むしろ、職場を転々としなければならず、その都度仕事を覚え直し、人間関係を構築していかなくてはならない派遣社員は大変だ、私には向いていないなあと感じていたし、まだ年功序列の気風が強くあった当時、一つの会社に留まれないって不利なんじゃないの? と思っていた。
それから二十年後の現在、「就職氷河期世代は正社員の採用が少なく、派遣社員やバイト等の非正規労働に甘んじなくてはならず、そのためにキャリアを十分に積めていない人が多くて就職が困難」という話をきくたびに、先ほど「派遣社員のススメ」の話が思い出さる。今でいうところの「ワークライフバランスがとれた働き方」を醸し出し、いかにも良い働き方の選択のようにみせておいて、結局は企業が正社員だと業況が悪くなっても簡単にクビを切れないから(その気になれば切るけど)、忙しい時だけきてくれるスポットの人・・・派遣社員が欲しいというだけの話だったのだ。リーマンショック後の「派遣切り」をみれば、派遣社員がいかに不安定な立場なのかわかる。
私はずっと正社員で来ているが、一歩間違えれば「派遣労働者」サイドにいたかもしれないと思うと決して他人事ではない。そんな私からすると「好きな時に好きな場所で働ける」フリーランスがもてはやされている現状は、派遣社員が「新しい働き方」としてもてはやされていたのを想起させる。
フリーランスも派遣社員も否定するつもりは毛頭ないが、時代の求める「使い捨て要員」にならないように絶えず自己研鑽・自己学習が必要だ。正社員も会社で教育してくれるから大丈夫とか、与えられた仕事を淡々とこなしていけばよいでは、突然やってくるリストラという大鎌に足元をバッサリすくわれてしまうかもしれない。
自己研鑽・自己学習はいつでも誰にとっても欠かせない。就職氷河期世代の私は今もそう思い、行動している。
コメント